REPORT円卓会議

円卓会議1

リスペクト。組織の心理的安全性を高めるには

ハラスメント防止を土台にした、心理的安全性のあるチームづくり

小西 千栄子氏Chieko Konishi

NHK メディア総局 第3制作センター(ドラマ)副部長

石井 遼介氏Ryosuke Ishii

株式会社ZENTech取締役
一般社団法人日本認知科学研究所理事
慶應義塾大学システムデザイン・マネジメント研究科研究員

「すごいですね! 今、213人、この円卓会議に入られています」と驚きの声を上げたのは、ファシリテーターを務める相模女子大学大学院 特任教授の白河桃子さん。ダイバーシティ経営に重要な「組織の心理的安全性とリスペクト」をテーマに議論するこの会議では、NHKで多くのドラマ制作に携わる小西千栄子さん、大ベストセラー『心理的安全性のつくりかた』で知られる石井遼介さんを迎えました。

まず初めに石井さんから、心理的安全性の基礎知識がレクチャーされます。
「『心理的安全性』は最近よく聞かれるようになった言葉ですが、実は学者さんたちの間では1965年に提唱され、半世紀以上も研究され続けているものです」
概念の歴史とともに例に挙げられた医療チームの研究では、治療成績の良い医療チームのほうが、ミスの報告数が多かったといいます。「つまり、やらかしたときに言えるのが、心理的安全な組織・チーム」という石井さん。

小西さんからは、「リスペクト・トレーニング」の紹介です。
「Netflix社がハラスメント防止のために導入したというこのトレーニングを、NHKでは東京のドラマ部から取り入れようということで始めました。大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では、クランクインの前からキャスト約40人に加え、職員、スタッフなどがリモートで講習を受けました。メインキャストの著名な俳優さんたちから外部関係者まで原則全員。まず、セクハラ・パワハラなどの基礎知識を得て土台を揃え、このチームにとってお互いをリスペクトし、それぞれのパフォーマンスを引き出すのはどんなことかをディスカッションをする。今では必ず撮影前に原則全員で参加することになっています」

小西さんの話に、石井さんも加わっていきます。白河さんのテンポ良いリードで、「健全に衝突する」「いったん止まって、みんなで考える」などのキーワードが飛び交い、議論が深まっていきました。

そして後半からは、参加者を含めてのディスカッションです。白河さんが質問を募ると、すぐに手が上がります。石井さんが「こういった場で、一番に手を上げるって勇気がいりますよね」と感心すると、白河さんが「それは、27年続いているこの会議の、心理的安全性の賜物です」と笑顔で答えました。そして参加者からは「世界の他の国々と比べて、日本のカルチャーを背景として気を付けることは?」「先輩の厳しい指導で成長させる昔ながらの会社で、どこからアプローチができるか」など、10人以上から次々と質問が投げかけられ、活発に意見が交わされていきました。

白河 桃子氏Touko Shirakawa

ジャーナリスト・作家
相模女子大学大学院 特任教授、
昭和女子大学 客員教授、
東京大学 大学院情報学環客員研究員

70分間の円卓会議が、あっという間に終わりが近づきます。石井さんは「楽しかったですね! 自分を客観視することは難しい。だからこそフラットに、『それ、ちょっとずれてますよ』といってくれる人がどれだけいるかがすごく重要」、小西さんは「何か新しいことをやり遂げよう、いいものをつくろう、そういう気持ちが湧きたつような職場になってほしいし、自分たちもこれからも試行錯誤していきたい」と感想を語ります。

白河さんは、「緊張感を保ちつつ、でもお互いに言いたいことを言える。その環境、風土がまさに重要で、さらにその心理的安全性の根底を支えるものが、ハラスメント防止ということなのかなと、深く考えさせられました」とコメント。さらに「ハラスメントを1対1の問題で捉えるのが一番良くなくて、組織の病ととらえる、みんなの行動を変えていくことが重要。ぜひ皆さん、行動につなげていただきたいなと思います」と締めくくりました。最終的な参加者は268名という数字に、白河さんも驚きを見せます。関心の高いこのテーマが一人ひとりのこれからの行動につながることを、確信したセッションでした。

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