REPORTイブニングセッション

イブニングセッション

Drive Diversity Together

多様性によって強靭性を高める。ダイバーシティをドライブして社会問題の解決へ

野口 聡一氏Soichi Noguchi

宇宙飛行士、博士(学術)

「今回のDrive Diversity、相当かっこいいタイトルですね!」と朗らかな第一声の野口聡一さん。一昨年と昨年の会議にはNASAなどからオンラインでご登場、そして今年は東京のメインステージにご来場いただきました。今年6月にJAXAを退職され、7月からは国際社会経済研究所理事、株式会社イー・ウーマンのアドバイザリーボードメンバーにも就任されたばかりです。

「JAXAを退職されて驚きました。第35回の国際女性ビジネス会議は宇宙からやりましょうという、昨年の約束はどうなるのですか?」
「それは、やりましょう。民間人としても宇宙に行かれます。お金があれば」
そんな笑いも誘いつつ始まった野口さんと佐々木かをりとのトークショー。まず明かされたのは、実は昨年の国際女性ビジネス会議が野口さんにとって「ポジティブな爪痕を残した」という事でした。
野口さんは昨年、NECのCEO森田隆之さんとマネックスグループCEO松本大さんのディスカッションを視聴され、「トップがダイバーシティを牽引する組織は素晴らしい!そういう会社がNext Chapterを開いていくのだろうな」と腑に落ち、それがJAXAを卒業後にどういう仕事をするかの大きな決め手になったと。これは主催者である佐々木かをりにとっても嬉しい驚きです。

そして野口さんは、「宇宙におけるダイバーシティ」でも、多様性のあるチームが強いというのが「肌感覚としてある」と言います。
「危機に直面したとき、チームとしてのレジリエンスがダイバーシティを入れることで強くなる。単一性で固めた組織は、想定外のことが起きたときに動けない」

大きく頷きながら、「その強さというのは従来の鎧をつけた強さではなく、どこから打たれてもどんなに凹んでもまた元通りに形状記憶のように戻る、インクルーシブでしなやかな強さですよね」と佐々木かをり。

佐々木 かをり氏Kaori Sasaki

株式会社イー・ウーマン代表取締役社長
株式会社ユニカルインターナショナル代表取締役社長
国際女性ビジネス会議 創設者・総合プロデューサー・実行委員長

もう一つ重要なこととして、野口さんご自身の体験から、アメリカ人でも軍人でもトップパイロットでもない自分が宇宙飛行士の中でマイノリティであったこと。でも、NASAがダイバーシティを重視していることに救われて、今の自分があることを強調。
「自分がマイノリティであるという実感をもったとき、組織のダイバーシティに助けられた。そういう肌感覚をもっている経営者は強いと思います」
さらに話題は、アメリカと日本のダイバーシティの違いへと展開。野口さんは、「NASAで女性が仕切る会議は、人の話を聞く基本的な姿勢があり、上司に物言うことに対する恐怖感がなかった。一方、男性が仕切ると話を聞いていないし、予定調和が大事にされ、問題解決より組織維持が優先されてしまう」と言い、「女性が仕切る組織が日本ではまだ少ない」と指摘。

日本のダイバーシティを牽引する佐々木かをりは、日本の企業でも取締役会に女性が1人、2人と目指して実現しつつあるのは良いことだとしつつ、「管理職やCXOのポジションなど、意思決定をする立場の女性を増やすことでどんどん変化が起きる。審議会などでも委員だけでなく座長の半分を女性にすることが今後の課題」と言葉に力を込めます。

「どの企業もダイバーシティインデックス、受けましょう」とアドバイザリーボードとしての発言も飛び出し大いに盛り上がるうちに終了時刻となり、野口さんは力強いメッセージで締めくくりました。
「ジェンダー、障害者、性的マイノリティ、人種やイデオロギーの問題など、世界の色々なところでマイノリティの人々が苦労をしている時代。能力主義に包含されない層も厚い。その中で多様性を生かして強靭性を高めることが重要。ダイバーシティをドライブする力が、社会問題を解決する糸口になるのではないでしょうか」

第35回 国際女性ビジネス会議は宇宙からという約束を心に秘めながら、野口聡一さんを佐々木かをりが笑顔で見送り、次のセッション「イブニングネットワーキング」へと突入しました。

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