REPORTイブニングセッション

イブニングセッション

Finding Peace

Drive Diversityに、紛争やテロをなくすアングルもリンクさせよう

加藤 美和氏Miwa Kato

UNODC グローバル事業局長

オーストリアのウイーンから、国連の越境犯罪・違法薬物対策部局(UNODC)本部唯一の女性局長として活動する、加藤美和さんの登場です。「昨夏集った時からの一年で、世界は様変わりしてしまいました。私たちは今、侵略戦争による暴力や流血を止める手立てがないことを、これまでなかったほどに日々まざまざと突き付けられています」と、まずは厳しい状況に置かれている国際情勢を語ります。

「平和を享受する私たちだからこそ、自分たちの生活や働く環境だけを語るのではなく、世界のコンテクストにも思いを馳せ、私たち一人一人の行動がそれらにどうつながるのか、何ができるのかを考えましょうというのが、Finding Peace、平和を見つける、というテーマに込められた想いです。」スピーチのタイトルについてそう説明し、話題は昨夏からのアフガン情勢、今年2月から始まったウクライナ攻勢へ進んでいきます。

さらに、この会議の2日前に他界された安倍元総理の事件にも触れ、「日本のような平和で安全な国においても、選挙応援演説中に元首相が銃撃されるという事件が起こり、生涯忘れることのできない瞬間となってしまった。このショックをどう受け止めるのかと考え、普段はあまり外ではしない私の現在の本業である、テロや過激派の防止との関係についてもお話させていただこうと思います。」この会議に何度も登壇されている加藤さんだからこその、参加者に向けた特別な思いが語られます。

「私は平和を見つけるために必要なアクションや変化は、今日の本題であるDrive Diversityと非常に大きく関わっていると思います。多様性や寛容精神の欠落するところに、争いや暴力が生まれるからです。極端な人たちだけの話をしているのではありません。自分の価値観を人に押し付けたり、違う意見を言う人たちは完全に間違っているという決めつけで世界と関わること、実は私たち自身も、日々気づかずにしていることはないでしょうか。また、社会的討論も、論陣に分かれて意見を戦わせ、中庸の具体的コンセンサス作りに持っていけないことが多くないでしょうか。」

日常の言動から振り返ろう、と呼び掛ける加藤さん。「それが、テロや戦争と関係あるの?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実はこうした対決型の思考パターンと、物理的な暴力の行使は、状況が整えば非常に簡単につながってしまうのです」と、さらに言葉を重ねます。

「テロ過激派対策もふくめ、分断を乗り越える具体策を考えて行動していくことが、平和を見つけることにつながると確信しています。これこそが真のダイバーシティ&インクルージョンではないでしょうか。お互いに人間として個人として尊重しあい、平和を見つけることにコミットした人たちを倍々ゲームで増やしていけば、社会を変えることができます」

最後に、「マインドセットや社会のシステムの変化をさらに進めて、Drive Diversityに紛争やテロをなくすというアングルもリンクさせて、みんなが平和で豊かな社会を生み出していこうではありませんか」と、熱いメッセージが送られます。

日々の行動からFinding Peaceにつながることを、誰もがしっかりと受け止めたひとときとなりました。

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