REPORTイブニングセッション

イブニングセッション

テクノロジーが予測する未来 〜Web3, NFT, DAO, メタバース〜

「非中央集権型」のWeb3が、日本の未来をパワフルに変えていく

伊藤 穰一氏Joi Ito

デジタルガレージ 取締役 共同創業者 チーフアーキテクト、
千葉工業大学 変革センター センター長

「Drive Diversityにおいては、今後、テクノロジーというものが欠かせません。私も本当にテクノロジーをやっていて良かったし、もっとやっておけば良かったと思っています」
そう言って口火を切ったのは、ネットイヤーグループ取締役の石黒不二代さん。米マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ所長などを務めたJoi Itoこと、デジタルガレージ取締役の伊藤穰一さんを迎えてのトークショーが始まりました。

さっそく「Web3.0とは何なのか」と伊藤さんへ問いかける石黒さんに、「Webについては、1、2、3とあったので、まずはそこから」ということで、流れをまとめたパネルが画面共有されます。Web1.0は「read」、Web 2.0は「write」、そしてWeb3.0は「join」というキーワードが示されました。
「WEBができる前、まず電子メールやプロバイダで世の中をひとつのネットワークでつなげるいうインターネットができ、そこでWebサーバーに会社などがウエブサイトをつくり、世界のどこからでも読める、見られるようになったのが『read』、Web1.0です。2.0は『write』。つまりクラウドやモバイルが普及することによって、誰でもソーシャルメディアに書き込めるようになりました」

そして今、Web3.0といわれているものは、「非中央集権型」である、と伊藤さんは説明します。ブロックチェーン技術によって、企業などが集めていた情報などが分散し、誰でも見られるようになるこの世界を、「2に比べると面白い」という伊藤さん。利益が集まる構図がアプリケーション中心からコンテンツやプロトコルへと変化することで、「日本はコンテンツのレイヤーが厚く強いので、Web3ではいけるんじゃないか」と、日本の今後に期待を寄せました。

さらに、話題は注目のDAO(分散型自立組織)、そしてDAOを運営するために通貨として発行されるトークンへと展開します。「株式のようにトークンを交換するんだけども、株式と一番違うのは流動性が高いこと」という伊藤さん。「働いている人がトークンをもらったら、それでコーヒーを買ってもいいし、長く持ってアップサイドをねらってもいい。株と現金の間みたいなもので、そういう意味でいうと、資本と労働の壁が少し薄くなってきているというのがひとつ」と、DAOによって変革する社会構造を示唆します。

さらに、顧客が参加できるということで、会社のあり方への影響も語ります。
「今までの株式会社は、ストックオプションによって、会社が株を公開するときに社員も儲かる。では今何が起きているかというと、お客さんもいろいろなサービスを使って、そのサービスがうまくいくことで金銭的にも利益を持てる、ということなんです。さらにガバナンスにも参加できるということで、企業のガバナンスやお金の配分がDAOによってずいんぶん変わると思います。DAOはほとんど無料で、数秒でつくれる。だから株式会社のあり方にいろいろと影響を及ぼしてくるんじゃないかというのがひとつの特徴です」

石黒 不二代氏Fujiyo Ishiguro

ネットイヤーグループ株式会社
取締役 チーフエヴァンジェリスト

Web3.0について、はじめに「join」というキーワードが掲げられた理由が、ここで明確になりましたが、「一般的に、他の人はトークンを『所有』と言ったりしますが」と問いかける石黒さんに、伊藤さんが答えます。「あえて所有と言わなかったのは、自分が投票して参加できるからです。今までは組織に参加できる機会というのは限られていたけれど、これからは、参加できるのが社員だけじゃない。みんなが参加する経済、みんなが参加する政治になる。それで、『join』という言葉がいいかなと」

石黒さんは、さらに理解しやすく導くためにインタビューを重ねていきます。
「一般的には株式会社はわかりますが、DAOは感覚的によくわからないと思うんです。具体的にイメージできるような例がありますか?」
すると伊藤さんは、「一番簡単なのは、学園祭とか飲み会のイメージ」と、身近なケースをあげてくれました。
「DAOが一番役に立つことというのは、多数の人たちがひとつのお財布を管理する、投票するというとき。会社をわざわざつくるほどではないが、資金を動かさなきゃいけないときはDAOに向いています。法律的にできるようになったら、地域の商店街とか地域通貨などもDAOで運営するのも便利なんじゃないかと思います」

石黒さんはその例を受けて、「インターネットが始まった時代も、ユーザーはそれで何ができるのかがよくわからなかった。フェイスブックやアプリが出てきて、使ってみたら面白い。そして、これがインターネットのアプリケーションなんだ、といわれて、そうなんだとわかる。ユーザーはそういうものだと思うので、DAOが使いやすくなればすごく広がるのでは」と答えます。「これからAIとか後継のツールがどんどん出てきて、一般ユーザーが使えるDAOのインターフェイスが開発されてきます」という伊藤さん。「そういうものがあって、『ああ、これがあのときJoiが言ってたことなんだね』とわかりますね」と、石黒さんがうなずきました。

テンポ良い石黒さんのリードで、NFTやメタバースなども含めて話し合ったひととき。伊藤さんは、「日本の利用率はほぼ最下位ですが、岸田総理がWeb3の環境整備をすると言っているなかで、期待は世界一。しかし日本は、ほとんどの官僚組織がつながっているので、リーダーシップを取るのが難しい。民間で、ある程度リードしないと次に行かないのでは」と日本の現状を読み解きます。石黒さんがその言葉を受け、「日本は30年負けっぱなしで、本当に危機。もうこれしかないと思っているので、ぜひJoiにならって、みんなでWeb3をやろう!」と最後に呼びかけ、未来を予測した刺激的なセッションが終了しました。

INDEX各レポートを読む