REPORTイブニングセッション

イブニングセッション

ダイバーシティを政治にいかす

一人ひとりが“当事者”となり、高い熱量で議論する政治こそが重要

河野 太郎氏Taro Kono

衆議院議員

「今から20年前、私の親父が肝硬変になりまして、余命半年と宣告されました」
衆議院議員・河野太郎さんのスピーチは、当時、衆議院議長であった父・洋平さんをめぐる家族の体験談から始まりました。

移植をするしか選択肢がない状況で、河野さんがドナーとなって肝臓の一部を提供。移植は無事に成功しますが、その頃は肝臓移植が保険適用ではなかったため、治療費はかなりの高額となりました。

「お金がなかったら移植ができないというのはおかしいと思い、猛然と厚労省に働きかけて、肝臓移植が保険適用になりました」

さらにその後、C型肝炎が国内でまん延した際に、「健康な家族を一人引っ張ってきて、その人から移植するしか選択肢がないのはおかしい。諸外国と同じように脳死になった人から移植というのが筋ではないか」と、次のアクションを起こします。
「そもそも拡張型心筋症などの場合、肝臓のように一部を移植というわけにはいきません。脳死の人からの移植がなければ、どうにもならない。私が法案の提出者になって、父と一緒に働きかけをして、臓器移植法を改正しました」

その時につくづく感じたのが、「当事者になっているかどうかで、議論の熱量が全く違うということ」と、河野さんは語ります。

「どうやって崖っぷちにいる家族を助けるか、当事者は本当に直面している問題を考えなければならないのに、臓器移植法案に反対する人は『脳死は人の死なのだろうか?』と哲学的な議論をしている。こういうことって、選択的夫婦別姓や同性婚など、実はたくさんあるんです」

そして、「政治の場にいろいろな背景を持っている人がいれば、一つひとつの問題が自分の問題だという熱量で議論できる。そういう人がどれだけ政治の場にいるかで、議論が進むんだと思います」と、河野さんは断言します。
「日本で生まれ育った60歳以上の男性で、スーツを着るような仕事をずっと半世紀やってきました、という同じ属性の人だけが集まっていると、重要な問題があってもこの人たちには響かない。だからいろいろな生い立ち、経験がある人たちを集めて議論をしようという政治をしなければならないと思っています」

河野さんの選挙区のひとつである神奈川県の大磯町議会は、2003年から男女同数、または女性過半数という状況が続いているそうです。

「まずは地方議会から、いかに多様性をもった人たちを政治の場に集めていくのか、というのを考えないといけないかなと思っております」と締めくくった河野さん。一人ひとりが当事者となりダイバーシティ視点で動かす政治をつくるために、有権者としてのアクションを改めて考えさせられたスピーチでした。

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