The 28th International Conference
for Women in Business
第28回
国際女性ビジネス会議

MORNING SESSION

モーニングセッション

モーニングセッション自分を動かす

変化を起こすには、自分の内側から、変える。

高雄 美紀氏

高雄 美紀氏Minori Takao

NHKワールド
エグゼクティブプロデューサー

ニューヨーク在住のNHKワールド エグゼクティブプロデューサー、高雄美紀さん。今年はマンハッタン中心地のタイムズスクエアに立ち、土曜の夜の圧倒的な賑わいを映し出します。ニューヨーカーも観光客も写真を撮ったり談笑したり、それぞれに楽しんでいる様子が画面から伝わり、臨場感が高まります。

このタイムズスクエアという場所を高雄さんが選んだ理由は、「一つは、ダイバーシティの街ニューヨークの象徴ともいえる場所だから。もう一つは、ビル壁面に掲げられた、ブロードウェイで上映中の作品の看板を見ていただきたいから」。ブロードウェイのエンタメ業界で今大きな変化が起きていることを伝えてくれました。

どんな変化が起きているのか。

Covid-19のパンデミックによって街はロックダウンし、人種やジェンダー差別への警戒が強まり、劇場街は大打撃を受けた。そこからの復活を目指すブロードウェイは、今生まれ変わろうとしている。上映される作品は、もともと白人中心のものが多く、男性オンリーのクリエイティブチームもあった。それが2021年から一気に黒人や女性の作品が増えた。男性主人公を女性に置き換えた作品や同性カップルの結婚を描いた作品、アジア系の作品などが人気を博し、トニー賞でもさまざまな人種やジェンダーが選ばれるようになった。

そうした変化を高雄さんは、「お客様が多様なのに、役者やスタッフがそうでないのはおかしい。エンタメの力は、言いにくいことを言える良さもある。ダイバーシティによって観客の興味を惹き、社会問題への理解を促し、観客のひとりひとりが自分事と思うことで、エンタメを提供する側も観客も一緒に勝ち取っていこうという流れになっている」と語ります。

さらに話題は映画の世界へと展開。2023年、中国移民を描いた映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』がアカデミー賞を総なめしたが、実はハリウッドでは白人以外の監督は17%にとどまっている現実もあると指摘。一方で、ストリーミング配信などの新しいサービスでは、多くの人種や女性監督による作品が増え、人気を博しているとも。
そして、高雄さんが親交のあるエンタメ系ジャーナリストの言葉を引用して、「ただ政治的に正しいからやるのではなく、クリエイティビティそのものが多様性に富んできている。それに観客の目もこえてついてきてくれているから、自分がチャレンジすることの重要性がある。それこそがダイバーシティの道なのではないか」

こうしたアメリカのエンタテインメント業界の最新事情をリアルに伝えつつ、「私たちも自分の内側から変わっていくことが大切!」と参加者のみなさんにエールを贈る高雄さん。ニューヨーク駐在のジャーナリスト、プロデューサーならではの最前線における肌感覚と、鋭くも温かい視点による貴重なレポートでした。

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