講演
COVID-19と生きる

COVID-19の最新情報を発信! WHOからみた日本、今後の見通しとは

進藤奈邦子Nahoko Shindo MD, PhD

WHO(世界保健機関)
感染症危機管理 シニアアドバイザー

夕方になってきている東京ですが、続けて日曜日の朝を迎えているスイスのジュネーブから、WHO感染症危機管理シニアアドバイザーの進藤奈邦子さんが登場。爽やかな光があふれる窓辺で、「こんにちは!」と参加者に話しかけます。講演のテーマは「COVID-19と生きる」ですが、その前に話してくださったのは、ご自身の「Go Beyond」です。

「最初に、会議のテーマであるGo Beyondを聞いたとき、これは一つの大きなことを達成した人だから言えるフレーズなんじゃないかと思いました。そして一晩寝て気づいたことは、そうではなく、私の場合は『大きな挫折のなか』にあったということ。将来、脳外科医として続けていくことに不安を持ったとき、子どもが生まれて社会復帰するか悩んだときに、佐々木かをりさんに本当にそれでいいのかと声を掛けていただき、その後自分では気づいていなかった能力を見つけることができ、道を着々と歩いてきた。それが今につながっている。私にとってのGo Beyondは、挫折のなかに糸口がありました」。

勇気がわいてくる温かなメッセージから、いよいよ本題へ。WHOからさまざまなデータとともにCOVID-19についての最新情報が発信される、貴重なスピーチです。

「まず、現在の世界の状況について」ということで、地域別の集計、この24時間の間に報告があった国の感染者数TOP10など、まさに届いたばかりの数値が次々と示されます。
「日本の感染者数は一番下のほう、グラフではほぼ見えない感じです。日本のメディアを通じて情報収集なさっていると大変な状況になっているんじゃないかと感じるかもしれませんが、世界から見ると、日本はものすごく小さな数であることがわかると思います」。

WHOでも日本の対応を高く評価していると言います。
「日本のクラスター対策は大成功だと思っています。早期に打ち立てた『三密』の概念は、世界に3C(Crowded Places, Close-Contact Settings, Confined and Enclosed Spaces)として普及しています」。

今後の見通しについては、若年層への広がりによって収束困難になる可能性などを指摘。サーベイランス、診断技術、抗ウイルス薬など、拡大を抑えるための条件が挙げられます。また、経済への打撃についても言及。
「GPMB(WHO Global Preparedness Monitoring Board/世界健康危機モニタリング委員会)によると、COVID-19の経済損失は、500年分の準備資金に相当します。いかに準備が大切か、将来的にはいかに経済損失を防いでいくのかということも課題と言えます」。

最後に「以上、最新情報をお届けしました!」と、きりりとした表情をこちらに向けて締めくくった進藤さん。豊富なデータも示され、広い視野から世界や日本の今を見渡せたひとときとなりました。

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