講演
私の見たアフガニスタン

叩かれても立ち向かう女性の姿には、20年前とは違う強さがある

参加者がグループに分かれた円卓会議の後は、再び全員が集まっての第5セッション。トップバッターは、この会議の2週間程前、2021年8月27日に、たった一人自衛隊機でアフガニスタンからパキスタンに退避したばかりの、ジャーナリストの安井浩美さんです。現在はパキスタンのイスラマバードに身を寄せる安井さんに、佐々木かをりがインタビューする形で講演が進みます。

安井浩美氏Hiromi Yasui

共同通信社カブール支局通信員

安井さんは、本当は前日に退避する予定だったが、自爆テロが起きて空港が閉鎖になったこと。翌8月27日の朝、日本大使館とカタール大使館から連絡をもらい、「まずは邦人に出国してもらう」とのことで、カブール市内のホテルに集合し、日本大使館が手配したカタール政府のバスで空港に行ったこと。その際、「街は特に危険もなくスムーズに移動できた」と、私たちがメディアで見にする危険な街のイメージとは違った景色も。
そして、空港の検問所でタリバンとの意思疎通がうまくいっていなかったため2時間以上待たされた、その時の安井さんの不安な気持ちなども、生々しく伝えてくださいました。

アフガニスタンに住んで20年になる安井さんにとって、ここは第二の故郷。「居心地のいい大切な場所」だといいます。そのアフガニスタンが今は34の州の33までがタリバンのコントロール下にある。一つの州では抵抗運動があり戦闘が続いているが、タリバンは「全州を掌握した」と発表している。報道を封じ込めたり、一方でSNSを使って虚偽の報道をして人心を惑わしたりすることが、「とても怖い」と安井さん。

ここで佐々木が、気になる「女性の権利」について尋ねます。安井さんは、「カブールの街を見る限りでは、服装にもばらつきがあり、まだ女性に対するブルカ等の強制はないようだ」としつつ、地方では女性が働くことが奨励されていないし、デモ隊の女性に暴力をふるうなど権利の迫害も起きていることに言及。「でも、叩かれても立ち向かう女性の姿は20年前とは違う。強くなった。頼もしい」と、報道ではあまり見られない女性たちの姿にも触れます。

タリバンの現状をどう見るか、この先正式に政権が樹立されるのか、内戦になるのか、人々はどう見ているかなど、20年暮らして現地取材を続けた安井さんならではの視点がシェアされ、画面越しに多くの参加者がじっと耳を傾けていました。

最後に佐々木が「国際社会は何をしたら良いでしょう?」と問いかけ、安井さんが答えます。「各国政府がタリバンと腰を据えて対話して、タリバンがどんな政権なのかを見極め、アフガンの人々には今何が必要なのかを探り、援助を進めてほしい!」。ライブ感あふれる安井さんの報告が力強いメッセージで締め括られました。

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