トークショー企業成長とダイバーシティの関係

  • 松本 晃
    松本 晃

    元 カルビー株式会社 代表取締役会長兼CEO

  • 鈴木 純
    鈴木 純

    帝人株式会社 代表取締役社長執行役員 CEO

  • 高岡 浩三
    高岡 浩三

    ネスレ日本株式会社 代表取締役社長兼 CEO


ダイバーシティは目的ではなく手段。今こそ日本企業が変わる時

毎年熱い注目を集める、グローバル企業の凄腕経営者たちによるトークショー。今年はどんな本音が飛び交うのか、期待が高まります。ファシリテーターはOECD東京センター所長の村上由美子さんです。

「企業成長とダイバーシティの関係は、よく取り上げられるようになってきました。しかし日本の企業ではダイバーシティが先走って目的化しているという現象が気になるところです。豊富な経験をお持ちのお三方に、まず『ダイバーシティって儲かるんですか?』というところからお聞きします」

ズバリと直球で切り込む村上さんの質問に、ネスレ日本株式会社 代表取締役社長兼CEOの高岡浩三さんは「答えはイエス」と即答します。
「21世紀はイノベーションを起こせないと稼げない。イノベーションは単に新商品や新サービスだけではなく経営のしかたまで、そのすべてを含めての変革。となると、そのためにはかなり違った視点が必要になる」

帝人株式会社 代表取締役社長執行役員 CEOの鈴木純さんも「2000年くらいからダイバーシティを推進する取り組みを会社として進めています」と答えます。
「しかしダイバーシティは目的ではなく手段なので、儲かるためにはそうなっていないといけない。未来の社会に受け入れられる会社でありたいなら、社会の変化を先読みしてポートフォリオを変えないと対応できない。私は儲かるというより、むしろ会社の成長には欠かせないという危機感から進めています」

元カルビー株式会社代表取締役会長兼CEOの松本晃さんも「東西の冷戦が終わり、パラダイムが変わってしまった。なのに日本は変わらないからよくならない。それを前提として進めざるを得ない」とし、自身が社長を務めたジョンソン・エンド・ジョンソンやカルビーで利益を上げた具体的な実績を紹介しながら、「とにかくガタガタ言わずにやれ。でもみなさん、あんまりやらないんですよね」と苦笑いします。

では、日本の企業はどこに課題があるのか。高岡さんは「キャリア・昇進のために転勤を受け入れざるを得ない終身雇用。だから役員の90%が男性になる」、鈴木さんは「多様性のメリットを実感できるコミュニケーションが少ない。僕らが機会を与えていない。カルチャーと相互理解を両方醸成していくことが大事」、松本さんは「ダイバーシティを進めると、必ず損をする人が出てくる。管理職の数は基本的に定員制なので、女性を増やすと男性が減る。だから優先順位として上がってこない」など、それぞれの視点からポイントを挙げ、議論を深めていきました。

熱く意見を交わした最後に、真剣に聞き入ってきた会場を見渡し、「国が、会社が成長するために必要な手段であるダイバーシティを、かなりシャープな言葉を用いたメッセージとして受け取っていただけたと思います」とうなずく村上さん。まだ道半ばである日本企業のダイバーシティへ向けて、今年も多くの提言を含んだトークショーとなりました。