講演熊本発・ワシントンDC行き

  • 本田 桂子
    本田 桂子

    世界銀行グループ 多数国間投資保証機関(MIGA)長官


自分にとっての成功を定義し、ポジティブにチャレンジして成果を。

本田 桂子写真

今まで多くの人の前でパーソナルストーリーを語ることはなかった、でも今回は話してみたいと思ったという世界銀行グループMIGA長官の本田桂子さん。「学生時代から戦略的に考えて今に至ったわけではなく、随分周り道も失敗もしました。その私自身の歩みをお伝えし、女性としてどう社会の中で生きて行けば良いのかをみなさんと話し合えれば」とスピーチを始めると、会場の女性たちの目が期待に輝きます。

4年前、政治リスク保険と信用保証を提供する、世界銀行グループ多数国間投資保証機関(MIGA)長官就任。それ以前は24年間マッキンゼー・アンド・カンパニーに在籍、と聞けば、帰国子女で大学時代からキャリア一直線の女性をイメージしがちです。でも本田さんは、「帰国子女ではない。九州の田舎で育ち、小学校2年生で体をこわしてから健康以外はあまり期待されない人生だった。音楽の先生になりたかったが、自分の限界を知って普通の大学へ。しかし大学でもしばらくは、将来への明確な答えは得られずにいた」と言います。

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雇用機会均等法以前の当時、4大卒の女性は就職難で、しかも「下宿」から通う女子は「就職にとって戦略的に最も不利益な立場だった」。そんなとき、偶然にも大学4年の夏、友人の付添でいったインタビューで採用され、マッキンゼーのサマージョブを体験。「こういうことをやってみたい」と思うようになり、外資系コンサル会社から内定をもらうにいたった。「あの時、4大卒下宿の女子は不可!と言われなかったら、私は今のような人生は歩んでいないのです」と、晴れやかな笑顔。

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その後、世界銀行、MIGAの業務内容の紹介から、日本での女性活躍の課題へと話題が進みます。本田さんは世界経済フォーラムの(女性)ジェンダーギャップ指数を引用して、「世界144カ国で、日本の女性活用は政治は103位、経済は118位と、かなりイケてない感(笑)が強い」と言いつつ、一方で「女性の大学進学率は45%と男性との差が縮まり、労働参加率も伸びて昨年はじめて日本はアメリカを抜いた」と良い面も。そして、「女性が自分の受けた教育、スキルを活かせる仕事をしていない。先ほどの講演でUN WOMENの加藤美和さんもおっしゃったように、管理職で女性が少ない」と、日本での課題を指摘。

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最後に、「15〜20年前の自分に戻れるならどうするか考えた」と、3つのポイントを挙げてくださいました。1つ目は、自分にとっての成功を定義すること。これは、MIGA長官になる前に「母親には社会に貢献できるような仕事をしてほしい。人生の最後にあなたを評価するのは上司ではない。自分自身かもしれないし、子どもである私かもしれない」と言った娘さんの言葉に影響を受けたそうです。

そして、それに向かってポジティブにチャレンジし、成果を出すこと。3つ目は、自分だけで出来ることは限られるので人にどう動いてもらうかを考えること。
「これは今日の私からのトスだと思っています。みなさんからのアタックがあるのを楽しみにしています」と締めくくる本田さんに、ひときわ大きな拍手がおくられました。