トークショー女性は金融業界を成長させられるのか

  • 田代 桂子
    田代 桂子

    株式会社大和証券グループ本社 取締役 兼 執行役副社長 (海外担当)

  • 小林 いずみ
    小林 いずみ

    ANAホールディングス株式会社 社外取締役
    三井物産株式会社 社外取締役
    株式会社みずほフィナンシャルグループ 社外取締役

  • 鳥海 智絵
    鳥海 智絵

    野村證券株式会社 営業部門 企画統括 専務執行役員

  • 青山 朝子
    青山 朝子

    コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス株式会社
    理事 事業開発統括部長


しがらみを気にしないで「経営変革」ができるのは女性経営者の強み

男性経営者たちが企業成長とダイバーシティを論じた後は、金融業界の女性幹部4名が颯爽と登壇。女性の視点と手腕でどのように金融業界を動かし、経済に新たなバリューをつくり、未来を変えていくことができるのか、お話しいただきました。

最初に、野村信託銀行前社長の鳥海智絵さんから、女性CEOの会社に投資すると良い結果が出ているというアメリカでの論文紹介から会話が始まると、ファシリテーターの青山朝子さんは、「女性のほうがある意味で厳しいリーダーだと感じることがあります。男性社会にありがちな“あうん”の呼吸ではなく、鋭く切り込み、遂行していくフォースがありますよね」とさわやかな口調で語り、「そんな女性目線でつくれる価値は何でしょうか?」と問いかけます。

「金融機関の経営を変え日本の成長を作るには、『変える』ことができる人が必要。女性リーダーはマイノリティの視点をもって経営をすることができます。想像力を働かせて経営をするということ、それが成長につながるのではないでしょうか」と鳥海さんが示唆しました。

また女性として初めての大手監査法人理事長に今年7月に就任した片倉正美さん。監査法人の理事長は、立候補の後に指名委員会で評価され、その後選挙で選ばれます。そのなかで片倉さんは「これまで理事長は男性ばかり。ですが、今まで自分が部下に言ってきたように、まず自分が手を挙げようと考えました」と話し、理事長になることで見えた新しい経営ビジョンを語ります。

メリルリンチ証券日本法人の元社長、小林いずみさんは「それまでは外国人男性社長だったが、大規模なリストラをする時期に自分が社長になった。いろいろなしがらみを持っていたら、断行できないからではないか」と、社長就任時を振り返ります。「なぜ女性幹部は、証券会社ばかりで、銀行にはいないのでしょう」との青山さんから質問に、「証券会社は外資の参入があり、激しい競合があります。その上、外資系証券会社では、社長をはじめ幹部が女性でなんら問題ないことが実証されています。日系証券会社も優秀な女性人材が外資系に奪われたことを知って、どんどん改革していかざるを得ない。しかし日本の銀行は、外圧がなく、プレッシャーもないから変革が起きないのかも」と考察します。

続いて株式会社大和証券グループ本社 取締役 兼 執行役副社長の田代桂子さんは、SDGsへの全社的な取り組みに触れながら、「真に持続可能な社会とは、男性も仕事だけでなく家庭を含めて、全てを手に入れることができる社会」と強調。また自身は2009年に役員に就任しますが、優秀な女性が退職することを懸念して当時の社長が19時退社それ以前から始めていたなどの背景があって昇格できたと、会社の風土づくりの大切さに触れます。

青山さんから「ここにいる女性幹部のなかには、海外での仕事経験があり、日本の枠を離れた経験があるのでは」と指摘すると、小林いずみさんは、「長官を務めた世界銀行のMIGAは、ダイバーシティそのもので、日本のルールは通用しない世界。初めて聞く国名の人が部下にいたり、全く自分とは異なる人を、どうやって同じベクトルに合わせ、さらに成績を上げていくのかが経営だと実感した」とふり返ります。

田代さんからも「海外では、“説明”が必要。対して日本の企業内で、まだ、あうんの呼吸を求めていることが課題です。これに対して女性は目的意識を持って、この状況を変えることができます。さらにチームを作るのも上手」。つづけて「変革の時代を、女性ならではのしなやかさでダイバーシティに変えていく。それが企業のスケールアップのためにも重要」と片倉さん。

女性経営者が、金融業界に新しい視点を追加することで、経済が変化していく様子を感じ取れるトークショーとなりました。「あらゆる業界で変革が求められ、ダイバーシティが進んでいる中、数値化して進捗状況を見ることも大切」と、青山さんが企業におけるダイバーシティを数値化するテスト&サーベイのプログラム「ダイバーシティインデックス」を紹介し、ランチタイムとなりました。