REPORT


円卓会議 205未来をつくる人事戦略

  • 有沢 正人
    有沢 正人

    中央大学法科大学院教授
    弁護士

  • 島田 由香
    島田 由香

    ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社
    取締役 人事総務本部長

  • 浜田 宏
    浜田 宏

    アルヒ株式会社 代表取締役会長兼社長 CEO 兼 COO

  • 佐々木 かをり
    佐々木 かをり(F)

    株式会社イー・ウーマン代表取締役社長
    株式会社ユニカルインターナショナル代表取締役社長
    米国ニューヨーク州エルマイラ大学名誉文学博士
    国際女性ビジネス会議実行委員会 委員長



有沢正人さん


島田由香さん

経営と人事の関係、評価のあり方などをディスカッションする円卓会議です。大人気となったこのテーマには400人以上の方々が集まり、スタート前から熱気が高まっています。ファシリテーターは、国際女性ビジネス会議実行委員会の委員長である佐々木かをりです。

始めにカゴメ株式会社の人事部長である有沢正人さんが「この中で人事担当の方、手を挙げていただいていいですか?」と呼びかけると、半分以上の方の手が挙がりました。
「おおー! では、人事以外の方で、わが社の人事はダメだと思っている方は? ああ、わかりました(笑)。ご協力ありがとうございます」

思わずふきだすみなさん。楽しげな雰囲気の中での会議スタートです。人事を担当して10年以上という有沢さんは、「人事戦略は企業戦略の中で一番大事」と語ります。 「10年後、自分の会社がどうありたいか。人事の方も、人事以外の方も想像していただきたい。これがイマジネーション、『想像』です。そこから逆算して、どういう人財をつくっていかなきゃいけないか。これはクリエイティビティのほうの『創造』。この2つをもって、人事戦略が一番重要なものであることを上の方に伝える覚悟と勇気が必要です」

ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社の人事総務本部長である島田由香さんは、「私は、世界を人事から変えられると思ってやっている」と力強くコメント。そしてユニリーバ・ジャパンが導入した、勤務場所や時間に制限されず、成果で評価する人事制度「WAA(ワー)」の紹介、さらに自身が大事にしている「育む」というキーワードを語ります。
「採用だけでなく、入ってからどう育むのか。『育てる』とは違う、双方向だということなんです。一方的に育てて何かを与えるだけじゃなくて、その活動をしながら、人事の私たちも、経営陣も、いろいろと学ぶことがあります」


浜田 宏さん


佐々木かをり

数多くの企業の経営に携わり、現在はアルヒ株式会社のCEO兼COOである浜田宏さんも、人事が学ぶことの重要性を訴えます。
「経営陣からみて頼りになる人事は、ビジネスを理解していること。自分の専門分野だけに強くても、営業、研究、製造などの現場を知らないと的外れになります。人事以外の現場へ行き、現場に寄り添い、実際に会社で何が起こっているかを知る。そうすることで、人事は経営にとって真のパートナーになれると思います」

参加されたみなさんからの投げかけは、「多様な働き方が認められる一方で、無責任なモラルハザードも増えつつある。どう取り組む?」「ミドルリーダーを育てるには?」、さらに中3で起業して現在高校1年生という方から「高校卒業後に社員を入れる予定だが、最初に選ぶ人に大事なスキルは?」という質問もあり、会場を大いに沸かせました。

そもそも成果はどう評価するのか、グローバル人財とは…など、まだまだ議論が白熱する中、惜しまれつつも終了時刻に。
「答えはありませんが、今日もたくさんのいいTIPSが出てきたので、ご自身のご判断と選択で進めてほしいと思いますし、その前にまず、ここにいる全員が自分を高め、いい人財になって貢献することから始めることで、周りが動いていくのだろうと思います」
佐々木が締めくくり、会場の熱気はこの後のパーティへと引き継がれました。

イー・ウーマンピアからのリポート

イー・ウーマンピアとは

いのくち さん

目からウロコ。人事って面白い!

人事ってつまらないもの、融通の利かないもの、人事担当者って冷たい、というイメージが私の中にありましたが、それを一掃する時間となりました。まず第一に、登壇者がみなさん魅力的でした。どの方も自分の言葉で、自分の体験を語られます。テキストに書いてあるような無味乾燥とした話ではありません。だからことごとく腑に落ちていきます。人事というものに対して、逆に自分から枠を作ってしまっていたのだと気付きました。個人的には、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス取締役人事総務本部長の島田由香さんにノックアウトされた感じです。カゴメの有沢氏、アルヒの浜田氏という年齢的にも大先輩に挟まれてもまったく見劣りしない存在感。もっと島田さんの専門分野だというモチベーションのお話が聞きたかった。時間がいくらあっても足りないと思える円卓会議でした。島田さんとは夜のネットワーキングパーティーでお話できて大満足です。

マカロン71 さん

「未来をつくる人事戦略」を聴いて

いつの日からか日本では終身雇用制が崩壊し、欧米諸国のように実力主義になりましたので、この「未来をつくる人事戦略」というテーマの円卓会議もとても楽しみにしておりました。会場に来られている参加者の方々は、企業の人事課の方が多かったようです。

カゴメ、ユニリーバ、アルヒ各社の人事課、CEOの方が講師陣です。講師陣の指導のお言葉として「人事戦略が一番重要。10年後を考えてみてください。Imaginationとcreativityの2つが必要ですね。こういうことを覚悟と勇気を持って人事部長や上司に伝えられること、責任をまっとうすることが大切です」、「何時間、どこで働いていても成果を出してくれればいいと思っている」、「採用も大事だけれど、より大事にしたいのは、人を育むことです」があげられます。

佐々木社長の「成果をどのように評価されますか?」というご質問に対し、「企業には成し遂げたい目標があります。その目標に対してどうかということが評価です。上からやらされているというのはよくありません。自分はどうするのかということを考えさせます」とご回答。また佐々木社長の「売り上げを上げている人だけを評価すると、会社がおかしくなります」とのご意見に「その人のビジョンやリーダーシップなど多面的に見て、いろいろな人からの意見を聞いてsurveyを取っています」とのご回答がありました。

人事課の方へのアドバイスとして、「人事がまずは現場に行って声を聞くこと、現場できちんと働くことが大切」というお言葉もありました。

あまりにも特別なお話ばかりでしたので、このレポートには書けませんが、企業の別の側面を垣間見ることができ、とてもお勉強になりました。この円卓会議でも、素晴らしい講師陣の方々が、質疑応答に多くの時間を割いてくださり、実り豊かな会議となりました。

juno さん

人は育むもの、そして財(たから)へ

円卓会議では、一番大きい会場にもかかわらず満席になるほどの参加者でした。人事という日ごろ会社の中では、地味な存在であるにもかかわらずなんという人気でしょうか。この熱気がまさに「人」が企業の、ビジネスの、生命線だということがわかります。登壇者の苦労された体験談はとてもリアルで、課題の難しさをうかがわせました。
会社にとって、どういう人がいい社員なのか。そして、人事部はそういう人を採用するために会社のビジョンを理解できているのかなど10年後20年後を見据えた仕事であることが伝わります。人事は経営の伴走者であり、一見地味ではあっても、本当は滋味なものであること。「育てる」から「育む」と「視点を変えることで生まれる企業の未来を学びました。