リポート

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『触れる地球』からみえること

竹村 真一

竹村 真一さん

文化人類学者

午後2時近くとなり、全体会議の講演はいよいよこれが最後。登場されたのは、文化人類学者の竹村真一さんです。照明が落とされ、会場全体が幻想的な雰囲気に。その中に、直径1メートル足らずの大きな地球が浮かび上がります。美しく青いその姿をよく見ると、そこには流れる雲や海流が映し出されていることがわかります。

竹村 真一

「これは、リアルタイムの地球なんです。今、イギリスが朝を迎えるところで、ハワイは夜になろうとしています。会議の始まりから、地球が6分の1くらい回っています。その間、皆さんこうやってセッションしているということですね。長時間お疲れ様です」

竹村 真一 竹村さんの言葉に笑いが起こり、まるで生きているかのようなその地球儀にますます熱い視線が注がれます。これは竹村さんが作った、世界初のデジタル地球儀「触れる地球」。インターネット経由で、今の地球に起こっていること、雲や水の動き、海流などをリアルタイムで映し出しています。2005年にはグッドデザイン賞・金賞を受賞、教育の現場でも多く採用されています。

「織田信長が見ていたような(笑)、16世紀の世界地図で勉強しているこの状況を変えたい。そう思って、これを作りました。宇宙に行かなくても、宇宙船地球号の様子がわかります。皆さんもリラックスして、地球を感じていただきたいと思います」

竹村 真一 柔らかい口調で語りかける竹村さんの言葉に、会場は穏やかな空気に包まれていきます。続いて、クジラやマグロの移動ルートなどさまざまなデータが次々とリアルタイムで、また過去にさかのぼって映し出され、そこから見えてくることを竹村さんが解説していきます。東日本大震災で起こった太平洋を揺るがすような津波の動きには、会場から驚きの声が起こりました。Pm2.5の動きでは、中国だけでなくロシアなどからも分解されずに流れてきていることがわかります。

「経済のグローバル化で、タイの洪水や311など一つの災害で世界中に影響が及ぶ時代。ビジネスリーダーも常に”地球目線”が必要です。また、これで地球温暖化の未来予測などを見ると悲観的になりますが、同時にこれだけ”地球の体温と体調”をモニターしうる程までに人類が知的に成熟してきているのも事実。気候変動へのクリエイティブな応答として始まった1万年前の農耕革命など、人類は歴史を通じて偉大なゲームチャンジャーでした。サステナブルであるには、常にクリエイティブでなくてはなりません。」

地球とコミュニケーションすること。それが、竹村さんが提案する次世代のためのゲームチェンジ。
生きている地球の今、そして未来に会場の全員が「触れる」、感動的なひとときでした。

注)出演者の肩書きは開催当時のものです。

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