講演
The Next Chapter:未来はデジタルではなく、命あるもの

テクノロジーだけが未来ではない。生物としての原点へ帰るために

チャンドラン・ナイール氏Chandran Nair

Global Institute for Tomorrow (GIFT) 創設者 兼 CEO

香港から登壇されたのは、世界に向けて重要な提言を行っている汎アジアシンクタンク「Global Institute for Tomorrow(GIFT)」の創設者、チャンドラン・ナイールさんです。「今日はいくつかの考えを述べたいと思います」と、こちらをまっすぐに見据えて語り始めます。
「何にフォーカスすべきか。一番大きなことは、『未来はデジタルではなく、命あるもの』という点。皆さんに思い出していただきたいと思います」

そして、社会に潜む課題へ、冒頭から鋭く切り込みます。
「私たちはデジタルに心奪われてきました。しかし、そのために、少し問題を見失ってしまっていると思います。デジタルの進歩を無視しろと言っているのではないのです。デジタルのテクノロジーで行き過ぎてしまっているということ、これが問題だと思います」

チャンドランさんがその一例として挙げたのは、コロナ禍で広がったテレワークです。
「多くの人が、『テレワークは未来だ』と言います。しかし、少数の人の利便性は上がるかもしれませんが、大多数の人はそこに乗り遅れているわけです。テクノロジーに依存することは、分断する道筋を歩んでいるということです」
さらに、コロナ禍で広がった手洗い習慣についても「それは特権階級ならではの考え。世界の7割の人は、きれいな水にすらアクセスできない」と、厳しい現実を突きつけます。

「これからはデジタルではなく、もっと基本的なところが重要」というチャンドランさん。安全な暮らし、上下水道の衛生、ヘルスケアといったところを見るべきだと訴えます。
「『より多く、安く、速く』というのが未来ではありません。もっと時間をかけなければいけない。グローバル化ということを考えた時、貿易やアウトソース、手頃な価格ということだけでなく、我々がつながるという意味でのグローバル化を考えていきたいと思います」

そして、「少し挑発的な提唱かもしれません」としながら、「皆さん、もう一度、注意を払ってください。落とし穴に落ちないで」と呼びかけ、スピーチがいったんは終了します。ここで佐々木かをりが「とても重要なメッセージ。私たちは常に再考し、自問自答しなければいけませんね」と語りかけると、さらに真摯な言葉が継がれました。

「テクノロジーだけが未来ではない。むしろ、命あるものこそが未来で、私たち人間というものは、生物学的プラットフォームの上に成り立っているということです。デジタルは世界中を更新していますが、これは非常に男性的だと思うんですね。世界の女性は、家族を守ることなど、生物学をよりよく理解していると思います。だからこそ、このアルゴリズムに最初に立ち向かっていくのは女性です」

進化によって分断が生まれるなら、私たちは今、どんなNext Chaptersを開けばよいのか。「命あるもの」という原点、そして未来について深く考えさせられる講演でした。

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